九州の平坦面を形成する安山岩の地質学的・岩石学的特徴 : "洪水安山岩"の提唱

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九州には, 新生代後期(鮮新世〜更新世)の平坦面を形成する輝石安山岩が広く分布している。例えば, 熊本・鹿児島・宮崎県境に広く分布する肥薩火山岩類の上位層や長崎・佐賀両県に分布する多良岳火山岩類のうちの古期安山岩類, 新期安山岩類がこれに相当する。これらの安山岩類は以下の様な地質学的な特徴をもつ: (1) 100〜200 mの厚さの安山岩溶岩が平坦な台地 (溶岩台地) をつくり縁辺部は急崖をなし, 基本的に複数のフローユニットは認められない, (2) 厚い溶岩全体にわたって板状節理が発達する。(3) アスペクト比が小さい (アスペクト比=平均の厚さ(V)/水平的な広がり(H)) (Walker, 1973), (4) 溶岩の下底部や上面部にガラス質な部分が発達することがある。これらの特徴的な産状は, 大量の安山岩溶岩が次々に, 複数の噴出口または割れ目から流れだしたものであると考えられる。平坦面溶岩の代表的な例である球磨国見山安山岩は, 下位から上位に向かって珪長質から苦鉄質に変化している。一般に閉鎖系のマグマ溜りでは, 下位に苦鉄質, 上位に珪長質のマグマが成層構造を作っていると考えられている。球磨国見山安山岩溶岩の組成変化は, 成層したマグマ溜りの上位から, マグマが順次噴出することで説明できる。また, 安山岩にフローユニットが観察されないことや, 溶岩全体に板状節理が発達していることを考えると, マグマは一度に大量に噴出したのではなく, 適当な量だけ噴出しながら冷却され, 板状節理が形成されたと考えられる。順次このような過程が繰り返され, 厚い溶岩台地が形成されたと思われる。もし, 活動に休止期があったとしても, 溶岩の表面が風化され腐植土が形成されるほど長期の時間ではなかったことが推定される。このような, 特徴を示す平坦面を構成する安山岩に対して"洪水安山岩 (nood andesite)"という名称を与えることを提唱する。また, これらの安山岩の親マグマは, Kに富む高マグネシア安山岩マグマの可能性が高い。
1995-11-30

九州の平坦面を形成する安山岩の地質学的・岩石学的特徴 : "洪水安山岩"の提唱

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