汽水湖沼における現生および化石珪藻群集
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
珪藻は汽水湖沼の環境変化を示す指標となる。この場合, 現生珪藻の群集変化から近年の環境変化を論じるだけではなく, 湖底ボーリングコア試料における珪藻化石群集の変化から過去の環境変動をも論じることが可能となる。筆者は, 日本各地の5つの汽水湖沼で現生珪藻の生態・分布を調査し, その結果をふまえて, 4つの汽水湖沼において湖底ボーリングコア試料中の珪藻化石群集の変遷を求めた。汽水湖沼における現生珪藻群集は極めて多様である。しかし, そのなかで汽水環境の変動を捕らえるのに適した数種を見いだすことができた。Cyclotella caspiaはその1例であるが, 宍道湖など表層水の塩分が10パーミルを下回るような低鹹汽水湖沼において, 優占的に産出する。日本における沿岸性汽水湖沼の形成は, 大きくは, 完新世における海水準変動と密接に関連している。しかし, 砂州の形成などの地形条件の変化の影響も大きく, 浜名湖と霞ケ浦の場合のように全く異なった環境変動の過程を歩むこともある。また, 湖底堆積物には100年から10年, 1年オーダー, さらには季節変動といった, 短期間の環境変動も珪藻化石群集の変化として記録されており, 気温や降水量などの気候変動, 地震・津波などの自然災害などとの関連が考えられる。
- 1993-03-29
著者
関連論文
- 汽水湖沼における現生および化石珪藻群集
- 中海・宍道湖における現生および化石珪藻群集に関する最近の話題
- 中海・宍道湖の自然史研究 : その14. 宍道湖より得られた柱状試料の珪藻分析
- 三浦半島北武断層の完新世における活動期と変位様式に関する考察
- 銚子半島高神低地における完新世海水準変化
- 三浦半島,北武断層東端付近の完新世海成段丘--その年代・古生物・地殻変動に関する資料
- Holocene sedimentation at Kasumigawa Lowland and Tachikawa Fault, Tokyo:The report of trench and drilling survey in 1991