対の変成帯の生成過程飛騨帯と三郡帯
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概要
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西南日本の飛騨帯と三郡帯は二畳紀末-ジュラ紀に対の変成帯を形成していたものと一般に理解されている。この小論において,飛騨帯と三郡帯を例として,対の変成帯の生成過程が解析された。飛騨帯における二畳紀末-ジュラ紀の深成変成作用の内容は,古生代後期の堆積岩類を源岩とする宇奈月片岩(とその相当岩類)にみることができる。宇奈月片岩は,約230 m.y.前に約6kb相当の深度において,花崗岩類の貫入を伴うことなく藍晶石-珪線石型変成作用をうけた直後に,褶曲作用や断層運動によって急激に約3kb相当の深度へ解放された。この解放現象の後約50 m.y.して,即ち約180 m.y.前に,宇奈月片岩は花崗岩類の貫入と紅柱石珪線石型変成作用をうけた。宇奈月片岩の源岩が6kb相当の深度へ造構的に埋没したのは約250 m.y.前のことであり,この時藍閃石変成作用をうけたと考えられる。この藍閃石変成作用の地下増温率が,藍晶石-珪線石型変成作用の地下増温率へ変化したのは,造構的埋没現象が起こってから20-30 m.y.ほどしてからのことであるらしい。三郡帯は,藍閃片岩相系列の変成岩類が,スキチアンの堆積岩類に不整合におおわれ,下部ジュラ系の上にナップとして累重して分布する地帯であるにすぎない。変成岩類の解放現象は少なくとも,約250 m.y.前と約170 m.y.前に2段階過程として行われた。三郡帯は宇奈月帯とともに,二畳紀末期-三畳紀初頭に,同一の藍閃石変成帯(=初生的宇奈月-三郡帯)として発生した。上部古生界の造構的埋没を伴う地殻の厚化とその差列的上昇が,対の変成帯,飛騨帯と三郡帯の形成において決定的な役割を演じたらしい。本稿では飛騨帯と三郡帯形成時の西南日本の造構体系も論じられた。
著者
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原 郁夫
Institute of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Hiroshima University
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原 郁夫
Institute Of Geology And Mineralogy Faculty Of Science Hiroshima University
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