ヒト恥骨結合部の癒合過程に関する組織学的研究 : 特に下顎結合部のそれとの比較検討
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概要
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胎生期例13例(男性7, 女性6例)と生後例46例(男性24例, 女性22例)の恥骨結合部を組織学的に検索し, 恥骨結合部の癒合過程を明らかにするとともに, 先に報告した下顎結合部のそれとを比較して, どのような差異を示すものか, ひいてはどのような特徴があるのかを研究目的とし, 以下の結果を得た.1. 恥骨結合部の構成組織は, 結合織層と軟骨層に2分することができた.2. 結合織層における線維の量は全胎生期を通して軽度で, ほぼ同程度であったが女性例の25cm例以降の例では中等度に増加していた.生後例でも女性例のみは, 中等度に維持されていたが, 結合織層は男性で2歳, 女性では12歳で消失した.3. 結合織層における線維の成熟度は, 胎生期例では線維の量に平行して, 成熟化していたが, 生後例では全例とも成熟優位であった.配列も胎生期では縦走よりしだいに斜走, 横走を示し, 生後例では横走のみを示した.軟骨細胞の出現は, 胎生期では結合織線維の横走の一定化時期に一致し, 生後例では細胞がさらに増加し25歳では高度となった.4. 軟骨細胞層のうち, 内側の軟骨細胞の量は全胎生期を通して高度で, 不変であったが, 生後例ではしだいに減少し, 12歳より軽度に存在するのみとなった.外側の軟骨細胞の膨化は他の所見に先行して胎生21cm例においてみられ, 生後例でもほぼ同じ傾向を示したが, 29歳例より消失した.他の所見としての石灰沈着, 柱状層形成, 予備石灰層形成および破骨細胞の出現は胎生31cm例より出現し, 胎齢の増加とともに高度となり, 生後例では高度, 中等度と年齢増加に伴い減少し, 19歳例で消失した.5. 恥骨結合の癒合機転は軟骨性癒合によるもので, 25歳で完成した.6. 恥骨結合部の完成後, 軟骨細胞変性および軟骨の変性, 融解がみられ, 女性により高度で, かつ出産歴を有する例ではより著明であった.7. 恥骨と下顎骨の両結合部は, 開始時期および完成時期ともに下顎結合が先行し, 恥骨結合ははるかに遅く癒合するものであることがわかった.さらに, 恥骨結合部の軟骨性癒合の生物学的意義は下顎結合部の骨性癒合と異り, 恥骨結合部を含む骨盤の機能に合目的性を示した.
- 1987-02-25
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