α-TCPプラズマコーティングチタン材のキャラクタリゼーションと骨組織反応
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概要
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α-TCPプラズマコーティングチタン材のコーティング層のキャラクタリゼーションと, イヌを用いた骨内埋入試験を行った.α-TCPコーティング層の化学的特性を, 化学分析, 密度測定, 粉末X線回折, 赤外線吸収スペクトル, SEM観察, TEM観察, in vitro溶解試験により調べた.キャラクタリゼーションのスタンダードとして, β-TCPを1, 400℃で焼成して合成したα-TCPを用いた.α-TCPコーティングチタン材は, β-TCP粉末をプラズマ溶射することにより作製した.α-TCPコーティング層のX線回折プロファイルにラインブロードニングが認められたことから非晶質相の存在が示唆され, コーティング層に約30〜35%のアモルファス相が含有されることがわかった.また結晶子サイズは約600Åであった.SEM観察, TEM観察の結果, およびα-TCPのスポットとハローを含む電子線回折パターンが得られたことから, コーティング層は粒径0.05〜5μmの粒子とアモルファス相からなるモザイク構造よりなることがわかった.化学分析値, 密度, in vitro溶解試験の結果から, コーティング層のCa/P原子比は1.64とα-TCPの化学量論値1.50よりも高い値を示した.アモルファス相は, 化学分析値と密度からハイドロキシアパタイト(以下HAp)に近似した組成と構造であることが推定された.骨内埋入試験として, α-TCPコーティングチタン円柱材を4頭の雑種成犬の大腿骨と下顎骨に埋入し, 骨組織反応を光学顕微鏡観察, 軟X線写真から検討した.また, 大腿骨における骨結合強さを引き抜き試験により測定した.コントロールとして, HApプラズマコーティングチタン円柱材を用いた.大腿骨内におけるα-TCPコーティングチタン円柱材の骨結合強さは, 埋入後2週から12週まではHApコーティングチタン円柱材の0.4倍であったが, 埋入後48週ではほぼ同値を示した.組織学的観察から, コーティング層は経時的に溶解し, 大腿骨の骨髄内において新生骨量は劇的に増加していた.また, α-TCPコーティング層は新生骨と置換していた.これらの結果から, α-TCPコーティングチタン材は骨置換型の生体材料として応用の可能性がみいだされた.
- 1993-11-25