ブラジル北東部半乾燥地域における有刺潅木林の樹木の導管生長と水収支
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概要
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ブラジル北東部半乾燥地域(セルトン)に卓越する有刺潅木林(カーチンガ群落)において2種類の樹木の樹幹サンプルを採取し, その横断面の導管細胞の形態を画像解析から調べ, 水収支のインデックスとの比較を行った。その結果, 次のことが判明した。湿潤年の場合には, サイズの大きい早材部導管の他に小径の晩材部導管も形成されるため導管の総数は多い。そのため平均周囲長は乾燥年に比べて短くなり, 単位面積あたりの導管組織の占有率は小さくなる。また, 光合成が順調に行われることにより年輪幅は広くなる。逆に乾燥年の場合には, 晩材部導管が形成される前に乾期が到来するため早材部導管のみの形成にとどまる。したがって導管の平均周囲長は湿潤年に比べて長く, 導管数も少ない。樹木の肥大生長は水ストレスのために抑制され, 年輪幅は狭くなる。結果的に全組織に占める導管の占有率は大きくなる。本研究に用いた樹種は水分環境の変化に容易に反応する特性を持つものの, 乾燥に対する抵抗力は小さい。すなわちカーチンガの植物遷移過程において極相林を構成する樹種群ではなく, 先駆種・優占種の立場にある。したがって, セルトンにおける恒常的な水不足に耐え切れず, より比重の大きく硬質な樹種群に代替されていくものと推察される。今後, こうした遷移の各段階の樹種についても同様の解析をする必要がある。
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