「古典語的合成語」の語形成過程について
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概要
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語形成操作における主要な過程には、語基(base)に接辞(affisso)を付加する派生語形成(derivazione)と、独立した語を並列させる複合語形成(composizione)がある。これらの語形成は、派生語形成が自由形態素である語基と拘束形態素である接辞との結合であるのに対し、複合語形成が自由形態素同士の結合であると換言できる。a)派生語:自由形態素+拘束形態素/拘束形態素+自由形態素 b)複合語:自由形態素+自由形態素 これらの代表的な語形成以外に、イタリア語には、ギリシア語やラテン語などの古典語を語源とする造語要素による結合が見られる。本稿では、このような古典語由来の造語要素による語形成を古典的合成語(complesso classico)と呼ぶが、古典的合成語は派生語や複合語と異なる形態素レベルの結合である。c)古典的合成語:拘束形態素+拘束形態素 本稿では、古典的合成語を構成している拘束形態素を結合形式(forma combinante)と呼ぶが、古典的合成語が複合語的な語形成を行うということから、結合形式は、"Forma Colta"(Dardano:1978)、"Semiparola"(Scalise:1990/1994)などと呼ばれることがある。また、一方で、生産的な結合形式が、派生語形成と同様に、自由形態素とも結合することから、Migliorini(1990)などでは、"Affissoidi"という用語が使用されている。このような用語の使用は、結合形式によって構成される古典的合成語が、派生語と複合語の特徴を部分的に共有する中間的な語形成であることを示していると考えられる。語彙部門における語形成規則は、派生語形成を行う派生規則や複合語形成を行う複合規則などから構成される。本稿では、派生語と複合語の特徴を共有する古典的合成語に関して、語形成規則がどのように適用されるかを分析することにより、現代イタリア語における古典的合成語の語形成過程を明確にしていく。そのため、古典的合成語を構成する結合形式を定義する意味において、同じ拘束形態素である接辞との相違点を明らかにする。このことに関しては、派生語・複合語・古典的合成語における構成要素の意味機能が、重要な役割を果たすことになる。このようにして定義付けされた結合形式について、語形成規則と語形成要素の形態レベルの関係に着目し、古典的合成語の生成過程の考察を行う。古典的合成語は、イタリア語に限らず多くのヨーロッパ言語にも見られる語形成であるが、その語形成過程を全体的に考察しているものは余り多く見られない。このことは、結合形式に生産的なものと非生産的なものが混在していることや、古典的合成語が、多くの場合、特定領域の専門用語として使用され、一般性に欠如することなどが原因となっていると思われる。しかしながら、生産性や意味領域に関係なく、結合形式という造語要素が、語形成の一部を構成しているのは事実である。特に、複合語形成が未発達であるイタリア語において、生産的に生成される結合形式による語形成を考察することは、イタリア語語形成過程を明らかにする上で、意義のあることと考える。このような意味において、古典的合成語の分析は、イタリア語語形成過程の文法モデルの構築を進める上で不可欠なものとなる。
- 2000-10-20
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