複合語における複数形態と生成構造
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概要
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1.はじめに 二つの構成要素からなるイタリア語複合語の複数形態は、複合語の第一要素をP_1、第二要素をP_2、複数屈折形態素をInflで表すと、次のような四種類の形式が存在する。a. 〈P_1-Infl+P_2〉 b. 〈P_1+P_2-Infl〉 c. 〈P_1-Infl+P_2-Infl〉 d. 〈P_1+P_2〉これらの形式が出現する規則については、複合語を構成している語彙範疇によってある程度説明可能であるとされるが、頻出する例外を見る限り、その規則はかなり複雑になることが予想される。また、複合語が単純語同様、語レベルで処理されるという点を考えると、複合語内部に屈折が出現する〈P_1-Infl+P_2〉や〈P_1-Infl+P_2-Infl〉の複数形態は、英語などには余り多く見られない特異な現象であると言えよう^<(1)>。このような複合語における複数形態に関して、本稿では、語彙論的なアプローチを用いて、複合名詞の複数形態生成過程の考察を試みる。本稿で扱う語彙論では、統語規則とは異なる性質を持つ語形成規則を語彙部門に設定し、出力として統語構造に挿入される語が完全に語彙部門で形成されるという立場をとる。このような立場では、屈折という現象が語彙部門内部で処理されることになる。屈折規則を語彙部門内に設定する方法は、内部屈折が生じるイタリア語複合語を説明する上で、効果的な手段の一つであると思われる^<(2)>。本稿では、このような語彙部門の設定により、複合語の生成過程を明らかにし、複合語における複数形態の出現が、内部構造と生成過程の差異に起因することを検証していきたい。このようなことから、複合名詞の複数形態生成に機能する規則を明確に記述することが、本稿の目的となる。
- イタリア学会の論文
- 1998-10-20
著者
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