中世シエナの金融業 : ボンシニョーリ銀行の興亡、およびシャンパーニュの大市との関係を中心に
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概要
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はじめに 中世のシエナ、とりわけ九人委員会体制の時代については、W.バウスキーの二冊の著書などにおいて政治体制、市民社会、国家財政のそれぞれの面から具体的な枠組みが呈示されており、日本でも比較的よく知られていると言えよう。ただ早くから発達し、中世ヨーロッパのいたるところで活躍し13世紀に未曾有の繁栄を誇ったと言われるシエナの銀行業については意外に情報が少なく、「13世紀のロスチャイルド」と評されるボンシニョーリ銀行についてさえも具体的な活動はあまり知られていない。そこで本論では、この点に関する五本の論文が収められた『シエナの銀行家と商人』という本をもとに、彼ら銀行家たちの活動について考察を加えたい。特に興味深いのは、実際の活動のピークは正確にはいつ頃訪れたのか、なぜ繁栄できたのか、地理的にはどのくらいの範囲まで活動の場を広げていたのか、13世紀末のボンシニョーリ銀行の倒産に続く連鎖反応に見られるような不安定な状況はなぜ生じたのか、また彼らは、都市の内部でどのような役割を担っていたのかというような点である。以下では、まず今回中心として扱う九人委員会の時代における都市の状況と彼らの行なっていた銀行業務一般の内容を概説しり、続いて主たる活動の場であったシャンパーニュの大市と個々の銀行商会について詳しく検討し、最後に彼らの都市における位置づけを考えることにしたい。
- イタリア学会の論文
- 1997-10-20