ガスパラ・スタンパ研究序説 : 『詩集』の特徴と評価の変遷を中心に
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概要
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はじめに チンクエチェントの中期にヴェネツィアで短い生涯を送った閨秀詩人ガスパラ・スタンパ(Gaspara Stampa)。ペトラルキズムという文学的潮流の最盛期に生き、その影響を深く受けた『詩集』を唯一の作品として残している。今日では、同時代の女流詩人、ヴィットーリア・コロンナとしばしば並び称されるが、批評史におけるスタンパの位置づけは、必ずしもコロンナのように一定してはいない。原典について言えば、当代一流の詩人として共に賞讃を浴びながら、ガスパラの作品は生前に日の目を見ることはなく、1554年姉カッサンドラの手によって私家版のような形で世に出た。コロンナの作品が、女性の『詩集』として初めて1538年に編纂され、その後も16世紀に版を重ねたのとは対照的である。第二版は約2世紀を隔てた1738年に、その後約140年の空白があって、1877年に第三版が刊行された。詩人への評価についても、ロマン主義の時代になって初めて論じられたが、その時期にはメロドラマのヒロインさながらの扱いを受ける。今世紀の初頭になると、一人の研究者の出現により、うってかわってコルティジャーナ"cortigiana"(娼婦)のレッテルを張られる。その後の論争は、とくに彼女の社会的立場やモラルをめぐって騒がれた。この一連の論争が一段落した今世紀の中頃になって、ようやく作品に基づく本格的な評価が始まったと言えよう。『詩集』の文学的評価に関しても、この世紀のペトラルキストの代表作家として文学史で紹介されるが、そのわりに、具体的な作風の上では、ペトラルキズムという整った形式からかなり逸脱している面がある。批評家の作品評価も大いに異なる。このように、スタンパの人物像の見方も、文学作品の辿った運命・批評の変遷(フォルトゥーナ)も、かなり特異な様相を呈している。本論では、ガスパラ・スタンパとはどのような詩人であったか、その作品の特徴、評価の変遷を中心に、彼女の実像と文学的価値を追求していきたい。
- 1996-10-20
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