パゾリーニの『不良少年たち』 : 生と死と聖性について
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概要
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序章 本論文は、ピエル・パオロ・パゾリーニの小説『不良少年たち』の分析を通じて、彼の心的傾向の一端を明らかにする試みである。パゾリーニは、読者の知性を挑発しながら数多くの文明批判や資本主義批判を展開し、戦後のイタリアの知識人が避けては通れなかったマルクス主義とカトリシズムの問題に深く関わってきたという点で、思想家としての重要な足跡を残している。しかし、もともと詩人として創作活動を始めた彼の作品にあっては、知的な論理よりも詩的・感性的な要素のほうがしばしば大きな位置を占めているのも事実である。特に小説『不良少年たち』においては、パゾリーニの心理的な特性が複数の象徴的なイメージを通じて作中に明瞭に反映しているのが認められる。本論文では、この小説の最も特徴的なイメージであるスラム街の「汚穢」、反発と魅惑とが一体になった「汚物」の分析を中軸にして、パゾリーニの心的・生理的な傾向に光を当てていく。
- 1995-10-20
著者
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