ペトラルカの詩的空間の構造『カンツォニエーレ』と『トリオンフィ』の対比において
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概要
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フランドル地方の画家ピーテル・ブリューゲルの下絵によるとされる版画の中に『時の勝利』と題された作品があることからも推察されるように、ペトラルカの『トリオンフィ』はルネサンス期にはおおいに人気を博し、その主題は好んで絵の題材として用いられた。しかし、その後は、『カンツォニエーレ』はイタリア文学を代表する傑作の一つとして高く評価され続けたけれども、『トリオンフィ』の評価は地に落ちてしまった。ペトラルカの著作の大部分はラテン語で書かれているが、『カンツォニエーレ』・『トリオンフィ』の二作はイタリア語で書かれている。14世紀イタリア文学の三巨匠の一人、抒情詩の名手とされる著者の手に成るこれらの詩編の評価が完全に二つに分かれてしまっているのは、作品自体に内在する原因によると考えられるが、その原因をさぐることによって、詩人ぺトラルカのなんらかの特質を示すことができるのではないだろうか。そこで、このふたつの作品の比較を通じて、ぺトラルカの詩的空間についての一考察を試みようと思う。
- 1989-10-20