条件法をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イタリア語の文法を記述した最初の著作(一五世紀半ば)とされる Grammatichetta Vaticana あるいは Regole della lingua fiorentina の著者が、essere の活用形を直説法・命令法・接続法・不定法とひとわたり述べた後、ラテン人には知られていなかったがトスカナ人には用いられているという動詞形態に触れ、asseverativo なる呼称のもとに示しているその活用形は、まさしく現代標準イタリア語の条件法の形態に他ならない。この著者の言う通り、今日 condizionale という名で言い慣わされているこの動詞形態はラテン語には無かった形であり、ラテン語がロマンス語へ変化していく過程で形成されたものであった。ところで sarei, saresti, sarebbe 等の系列とは起源を異にする二種類の別の≪条件法≫がイタリア諸方言に古くから存在したことが知られている。sarei に対応する形で挙げれば saria 及び fora によって各々代表される系列である。これら三種の活用形のいずれもが≪条件法≫という同一の名称で文法家から呼ばれているのは、条件文の帰結節に用いられたり、婉曲や推測の表現に使われたりするなど、その担っている文法的な意味・機能が凡そ同じであると考えられているからである。だが三種の条件法の諸方言に於ける分布状態は以下に述べるように各々別様であり、更にまた一つの方言内でも時代によって各語形に消長が見られる。本稿の目的は時代を一応一三世紀のイタリア語に限った上で、異なった方言を反映していると考えられる具体的な作品のうちに三種類の条件法がどのように現われるか、普通≪条件法≫という一つの範疇にまとめられている三者の形態の間に何らかの意味・機能上の差異がなかったかどうかを探ることにある。だがその前に、三種類の条件法の起源並びにその地理的分布について概観しておきたい。
- 1981-03-31
著者
関連論文
- イタリア語派生法の一問題 : 接尾辞ゼロの動詞派生名詞について
- 条件法をめぐって
- Dizionari tra teorie e pratica〔含 解説〕
- Manlio Cortelazzo-Paolo Zolli : Dizionario etimologico della lingua italiana. Bologna, Zanichelli, 1979-1988.1/A-C, pp. xxviii+308, 2/D-H, pp. xx+ (309-) 536, 3/I-N, pp. xxii+ (537-) 816, 4/O-R, pp. xxii+ (817-) 1114, 5/S-Z, pp. xx+ (1115-) 1470.