Aspergillus sojaeによるグルタミナーゼの生産
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概要
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味にとって必須成分であるグルタミン酸を高濃度に有する醤油を醸造するために, 醤油原料を効率よく分解し, 著量のグルタミナーゼ生産によって多量のグルタミン酸を遊離する醤油麹菌を使うことが認められた. ここではその菌株の選択と, グルタミナーゼ生産の培養条件について述べ, 合せて, その菌株を用いて得た醤油諸味にはグルタミン酸が遊離されること, 及び, その選択菌から得られた変異株を用いて, 工業的規模で, 高濃度グルタミン酸を有する良質の醤油を醸造し得ることを示した. 当社中央研究所で分離, 保存されている Aspergillus sajaeの245株はグルテンを分解して0-21.7mg/ml(平均100mg/ml)のグルタミン酸を生成し, 高蛋白分解活性を有する対照菌株X-816の3.9〜106%(平均84.8%)のプロティナーゼ活性を有していた. このうち, さらに再現性と, 高蛋白分解活性を考慮して, 菌株1112株が選ばれた. 液体培養における菌株1112のグルタミーゼ生産の最適培養条件は, 脱脂大豆と小麦中の澱粉と総窒素の重量比(S/N)3 : 1,リン酸-カリ5%, 初発pH7.5,温度30℃, 培養は3日であった. このとき, 5.2×10^6 unitのグルタミナーゼ活性を得た. 一方, 選択菌1112及び対照菌X-816を用いて, 脱脂大方と小麦を原料として得られた30℃, 30日後の諸味中のグルタミン酸は各々 14.8mg/ml及び12.8mg/mlで, この差は両者の諸味中のピログルタミン酸量差にはほぼ等しかった. このことは, 選択菌1112によって生産されるグルタミナーゼの働きを示唆するものである. また, この菌株による諸味は同一条件下で, 他の二, 三の醤油麹菌のタイプカルチュアーのものよりも1.0〜3.6mg/ml多くのグルタミン酸を有していた. この選択菌から得られた変異株262による諸味は, この選択菌のそれよりもさらに4.1mg/ml多くのグルタミン酸を有していた. さらに, 通常の工業規模で管理された150日目のこの変異株の諸味は, 食塩17.30%で, 18.6mg/ml のグルタミン酸, 18.0mg/ml の溶解窒素を有し, このときの溶解窒素利用率は87.11%であった. このことは, グルタミナーゼ著量生産菌1112から得られた変異株262は工業的規模で, 多量のグルタミン酸を有する良質の醤油を醸造するのに実際に使用し得ることを示すものである.
- 1974-08-25