屋外醗酵貯酒タンクにおける酵母の挙動について
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概要
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我々は屋外醗酵貯酒兼用タンクを開発し, 1965年以来大容量の屋外タンク(2,000〜4,800hl)を各工場に設置して醗酵および貯酒に用い, 今日まで全く無事故で, 良い品質のビールを生産することに成功している. この屋外タンクの構造および使用上の利点などについては, すでに1967年のEuropean Brewery Conventionにおいて発表した. 今回は屋外タンクで主醗酵を行なった場合の酵母細胞の挙動を従来型屋内タンクと比較しながら検討した結果について報告する. 1) まず, 下面醗酵非凝集性酵母菌株Nを用い, 最大の屋外タンク(容量3,800hl, 高さ11.8m, 直径7.5m)と従来型屋内タンク(730hl, 液層2.5m)とで同時に平行して主醗酵を行なった. 屋外タンクは液層が8mであるが, 上中下層の間に温度差および成分組成の差は認めなかった. られ屋外タンクと屋内タンクとを比較すると一般的に屋外タンクの方が酵母数がやや多く, 従ってエキスの減少およびpHの低下速度がやや早い. 主醗酵中の揮発成分(ジアセチル, アセトアルデヒド, 硫化水素, 高級アルコールおよびエステルなど)の生成経過は屋外タンクと屋内タンクの間に本質的差異はなかった. 2) 主醗酵中の酵母の諸性質の変化も詳細に調べたが, 屋外タンクと屋内タンクとで酵母の生存率, 呼吸欠損株の発生率, 酵母の年令分布, 醗酵力(Q_<CO2>), 細胞容積などにほとんど差異は認めなかった. 3) 次に凝集性の強い酵母菌株Fを用い, 中型の屋外タンク(1,450hl, 高さ8.9m, 直径5m)で主醗酵を行なった場合について調査した. この酵母でも醗酵中の成分の不均一性(stratification)は全く認められなかった. ただし醗酵後期には酵母は沈降し, 最終的には1ml中1500万程度となる. この酵母での醗酵速度は菌株Nに比してやや遅いが揮発成分の生成経過は菌株Fと菌株Nとでほとんど同様である. 4) 屋外タンク使用時に, 酵母の性質の変異が起こるか否かを確かめるため, 同一の酵母を10回くりかえし回収使用して主醗酵を行ない, その間の酵母の諸性質を調査した. ただし酵母は菌株Nを用い, ビール下し時に遠心分離によって回収した. 10回連続して醗酵を行なった後も, 酵母の醗酵力の退化や, 変異株の発生を全く認めなかった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1972-09-25
著者
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