無降雨日量水曲線の解析
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概要
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流出量を表面流出分と地下水流出分とにわけることは, 流域の水文学的研究にとつて基礎的に必要である。決定的な方法は, まだ見出だされていないから, 1流域について種々の方法を試みチエツクする必要があると思われる。そのための資料を得る目的で, 東京大学農学部附属愛知県演習林内東山流域の観測値に対して, 従来からある2,3の方法を適用した結果, 流域を特徴ずける1,2の事実を見出だした。無降雨日について或る日(または時刻)の流出量を, 前日(または1時間…等前)の流出量で除した値, すなわち1日減少比(または1時間減少比…等)は夏と冬(昼と夜)とで異なり, 1日減少比は必ずしも任意の1時間減少比の24乗には一致しない。しかし, 統計的取扱を目的とする場合には, 1日減少比の24乗根が1時間減少比であるとする平均的な意味の1時間減少比を考えることも必要であろう。高水時流出量の解析では, 普通30分〜1時間単位で流出量曲線を描くから, その際の地下水流出についても1時間減少比というような短間隔の比に頼る傾向があるが, 昼と夜とで明瞭に現われる1時間減少比の差異が, 全く地下水流出に基づいているか, どうかは, 疑わしいのである。従つて短時間間隔で作図する場合にも, 地下水流出分を求めるためには, 平均的な意味における1時間減少比を用いるのがより安全であると思われる。そこで, 無降雨日の1日減少比-それは数日間の平均的な減少比, すなわち正常減衰曲線から求められる減衰常数に一致するを, まず求めねばならない。無降雨日が長く続いた時の数個の流出量曲線の基底部を連結して得られるスムースな曲線を正常減衰曲線というが, 東山流域について(愛演の他の流域についても)これを求めると, どうしても夏と冬とに分けて考えないわけにはゆかない。しかし, この差異を昼夜の減少比の差異と同様, 地下水流出そのものの差異ではないとみるのがよいかどうかは, 今の所わからない。夜間の減少比が1を超えるということは, 地下水のみの減少に基づくと考えるとき明らかに不合理であるから, 地下水減衰を表わすものとしては, 短い範囲の減少比を用いないのであるが, 冬の減衰常数が1を超すというような不合理はみられないのである。また, 正常流量減少曲線から解析的に地下水貯溜量が誘導されるが, 同じ流出量に対応する地下水貯溜量が夏と冬とで異なるという結果に対してはなお今後研究の上で説明がつけ加えられねばならない。進んで, さらに高水時における地下水増加の起時に関する研究ができればここで得た減少常数を, 高水時を含めた連続的な流出量分析に応用することができるであろう。
- 日本森林学会の論文
- 1954-12-25
著者
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野口 陽一
東京農業大学農学部
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野口 陽一
Laboratory of erosion control, Faculty of Agr., Tokyo University
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片岡 順
Laboratory of erosion control, Faculty of Agr., Tokyo University
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