アイソザイムによる茨城県十王町サクラバハンノキ集団の家系構造
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概要
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サクラバハンノキ(Alnus trabeculosa Hand.-Mazz.)は, 湿地に特異的に分布する落葉性灌木であるが, その生育環境の特異性と人為の影響によって集団が減少し, 現在, 準絶滅危惧種に位置づけられている。本種の遺伝的な実態を正確に把握するため, 茨城県十王町加幸沢に成立している局所集団について, アイソザイムによる遺伝構造の解析を行った。12の推定遺伝子座を用いた結果, 平均ヘテロ接合体率(H_e)は18.6%であり, おおむね他の植物と同様の範囲の値を示していた。また, 遺伝子型頻度の観察値と期待値の間に統計的に有意な差がなかった。しかし, 空間的な遺伝構造を見た場合, 近距離では多くの対立遺伝子においてMoran's Iの値が期待値から有意に正に偏り, さらに, 12の遺伝子座すべてにおいて同じ遺伝子型を持つ個体同士が近接して生育する例が観察された。これらのことから, 本局所集団においては萌芽あるいは栄養繁殖による空間的な家系構造が存在し, その大きさは15m内外であると推定され, 現地保存および現地外保存を図るために考慮すべき空間的な家系構造の範囲が示唆された。
- 2000-02-16
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