北海道においてポプラ類に生ずるLeucostomaおよびValsa属菌とその生理的性質
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概要
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主として釧路地方の泥炭地防風林として植栽されたポプラ林を中心として, ポプラ類に寄生するLeucostomaおよびValsa属菌を同定した結果, 北海道においてはLeucostoma nivea(HOFFM.ex FR.)HOHN., Valsa sordida NIT., V.salicina(PERS.ex FR.)FR., V.ceratosperma(TODE ex FR.)MAIREの4種が寄生していることを確認した。このうちV.ceratospermaはポプラでは初めての記録である。L.niveaとV.sordidaは完全世代の形成は比較的まれのようで, 前者は今まで北海道でしかみつかっていない。後者はドロノキの枝のほんの一部にしか認められなかった。分離できたL.nivea, V.salicina, V.ceratospermaの3菌について培養実験を行なった結果, 斎藤氏しょう油寒天, ジャガイモ寒天, トウモロコシ煎汁寒天培地上では, いずれの菌もよく発育し, ポプラ樹皮煎汁寒天培地では発育がおそく, ワックスマン氏寒天培地では発育がきわめて悪いか全く発育しなかった。供試3菌のあいだではL.niveaが最もすみやかに発育し, V.salicinaが最もおそい。柄子殼はV.ceratospermaがトウモロコシ煎汁寒天培地上で形成したのみであった。各種樹木の殺菌枝上では3菌ともよく発育し.また柄子殼も1,2の例外を除いてはよく形成された。とくにV.salicinaではリンゴ, ナナカマド, ヤナギの枝で子のう殼をも形成した。L.niveaとV.ceratospermaは20°〜25℃を発育最適温度とし, 両菌とも5℃では発育しなかった。またV.ceratospermaは30℃でもほとんど発育しなかった。V.salicinaは25℃を適温とし, 5℃, 35℃では発育しなかった。L.niveaは水素イオン濃度でも適応範囲が広くpH3.0〜8.6で発育し, 3.0と8.6を除いてはほとんど発育には影響はなかった。V.ceratospermaは発育範囲は同じであるが, 好適範囲は4.0〜6.0であった。V.salicinaはこれらにくらべて範囲がせまく4.0〜7.7のあいだで発育し, 好適範囲は4.0〜6.0であった。
- 1970-10-25
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