ヤチダモのタネの発芽にみられた温週的傾向
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概要
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ヤチダモのタネの発芽遅延について研究しているあいだに, このタネの発芽経過が温度条件によつていちじるしく影響されることにきがついた。そこで25℃.と8℃.をつかい, おのおのの温度におく時間をいろいろにかえてみたところ, あきらかにある週期性がみとめられた。25℃.におく時間が1日のうち4時間のときにもつともよい発芽率がえられ, それよりながくなると次第に発芽率がおち, 22時間をこえると急におち, 25℃.だけにおくとほとんど発芽しない。一方8℃.だけにおくと, 発芽のハヤサはおそくなるが発芽率はそんなにかわらない。これらの事実は, 発芽をもたらす主要な反応はむしろひくい温度ですすむこと, その反応を有利にするべつの反応がたかい温度ですすむらしいこと, しかも後者の反応がすすみすぎるとかえつて阻害的にはたらくことなどを暗示している。適当でない温度条件におかれて発芽できなかつたタネをふたたび2℃.にたもつと発芽させることができるから, 高温ですすむ阻害反応は可逆的であるらしい。このタネの発芽における温週的傾向は, 湿層処理の条件によつて-すなわち休眠の程度によつて-ちがつてあらわれる。湿層処理をうけたタネからとりだした胚はすみやかに成長しはじめるから, こういうタネの発芽をおさえている因子はおそらくコルク質膜か, あるいは胚乳にあり, 胚は温週反応によつて成長力をたかめられ, これらの抵抗にうちかつて発芽するのであろう。ちかごろ, タネの発芽と光との関係が"光週性"としてとらえられようとしているが, ヤチダモのタネの発芽にみとめられたこのような週期性は, 植物の成長生理において報告されている温週性と関連がありそうにおもわれ, すでによくしられている発芽と変温との関係は温週反応として一般化されるだろう。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1956-07-25
著者
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