近代日本の仏教と国家(<特集>宗教-相克と平和)
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概要
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近代日本においては、強大な国家権力のもとに、宗教はなすすべもなく従属していたかのように見られがちである。しかし、最終的には国家権力に屈服したとはいえ、近代日本の宗教思想家たちは宗教とは何かを真剣に追求する中で、宗教と国家の関係を問い続けてきた。ここでは、三人の明治の仏教思想家を取り上げ、その成果と問題点を明らかにしたい。島地黙雷は宗教の自由を確立したが、宗教を個人の心の問題に限定することにより、神仏関係や、葬式仏教の問題が抜け落ちることになった。清沢満之は宗教が国家を超えることを明らかにしたが、他者に関する把握が不十分であったため、世俗の倫理をそのまま認めることになった。田中智学は宗教国家の確立をめざしたが、仏教と国家の一体性が前提とされ、世俗国家をそのまま認めることになった。これらの仏教思想家たちが共通して忘れていた死者の問題は、靖国神社としてかえって国家神道において採用されることになった。
- 2005-09-30
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