文明化としてのアフリカ・イスラーム化 : 比較宗教学の新たな視座を求めて(<特集>イスラームと宗教研究)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
黒アフリカにおけるイスラーム研究の宗教学的意義が、二種の「原理主義的」研究によって見失われている。アフリカ宗教の「原理主義的」研究は、イスラームをアフリカ宗教の範疇から排除し、イスラームの「原理主義的」研究は、アフリカ・イスラームの研究に、固有の価値を認めないからである。これは、各宗教の本質は一つであり、変化は逸脱でしかあり得ず、宗教接触や混交は各宗教にとって本来的なあり方ではないと考えられているからである。しかし本稿は、宗教、特に世界宗教とよばれるような世界に広がった宗教の本質はむしろその動態、つまり、宗教の伝播拡大、宗教接触・混交、宗教改革、分派独立などにある、と考える。同時に、動態としての宗教が展開する場は空間であり、それゆえ宗教は各地の文明形成にも深くかかわることに注目する。ヨーロッパ文明、イスラーム文明、中国文明、インド文明のような世界文明の形成に宗教は大きな役割をはたしてきた。黒アフリカのイスラーム化も黒アフリカにおける商業経済発展、都市・国家形成などイスラーム文明の形成と密接にかかわった。こうした観点から、各地の文明形成と深くかかわりながら発展拡大する宗教の動的プロセスを相互に比較する新たな比較宗教学の視座を本稿は提案する。
- 2004-09-30
著者
関連論文
- 超民族的コスモポリタン原理としてのフランス国民国家(ネイション・ステイト)思想--多民族大陸国家フランスの国家と国民の形成 (歴史のなかの国家と宗教)
- リモートセンシングを用いた内モンゴルの草原における柵内・外の土地の退化に関する比較研究
- 文明化としてのアフリカ・イスラーム化 : 比較宗教学の新たな視座を求めて(イスラームと宗教研究)
- 経済発展の歴史自然環境分析 : アフリカと東南アジア比較試論
- ヨーロッパに共同体は存在したか--地球人類共同体の哲学のために (課題研究 共同体の崩壊と再生)
- 「神の国」から「地の国」へ--ヨーロッパにおける主権国家思想の成立と中世世界
- 乾燥地域における人間生活の基本構造 (特集:乾燥・半乾燥地域の人文・社会)
- 悪や不幸をどのように説明するか--災因論からみたイスラーム、キリスト教、仏教の比較のこころみ (シンポジウム 日本人と宗教)
- 地球人類のための宗教学序説 (近代・ポスト近代と宗教的多元性)
- 和辻哲郎の風土と沙漠の思想
- ファミ・ジェネの時代と発電所のダウン・サイジング
- 稲作文化の世界観-神代神話にみる-
- 小川了著, 『可能性としての国家誌 現代アフリカ国家の人と宗教』, 初版, 京都, 世界思想社, 1998, 本文 291 頁+参考文献 18 頁
- アフリカにおけるイスラ-ム的回心をめぐる三理論
- 福井勝義編著『水の原風景』
- 和田正平著『裸体人類学 : 裸族からみた西欧文化』
- ジェンネ
- 大塚和夫著, 『異文化としてのイスラーム : 社会人類学的視点から』, 初版, 東京, 同文館, 1989, 368 頁
- 西アフリカのイスラム化と交易 : Trimingham 説再論
- トンブクトゥ--サハラ南端の交易・イスラム都市 (サハラ 地球最大の沙漠地帯)
- 裸族文化から衣服文化へ : 西アフリカ内陸社会における「イスラム・衣服文化複合」の形成 (中部アフリカ) (アフリカ民族技術の伝統と変容)
- ピエール・クラストル著, 渡辺公三訳, 『国家に抗する社会 : 政治人類学研究』, 書肆風の薔薇, 1987 年, 328 頁, 3,500 円