代謝系の再構築
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概要
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生命現象の中で最もよく研究, 理解されているのは代謝, つまり細胞内での物質の分解や合成過程である.バクテリアの持つ基本代謝を個々の酵素機能から再構築できれば, 生命現象の理解にとどまらず, そのバクテリアの未知の遺伝子機能特定, さらにはバイオエンジニアリングへの道が開ける.その前提となるのは, 代謝全体を電子化できる適切な知識表現法, および関連物質の化学構造や酵素反応の電子化技法である.また, コンピュータによる予測結果は, 最終的には実験室で検証しなくてはならない.本研究はこれら一連の問題を整理し, 解決法を与えた.具体的には, 代謝を再構築するための新しいフレームワークと, その記述法を提唱する.このフレームワークにより, 代謝の特徴がグラフで表現でき, ユーザが注目する代謝経路が, 最短経路探索に似たアルゴリズムで検索可能となる.また, 二点間の経路探索を複数個組合わせて, 酵素反応ネットワーク上の任意のサブネットワークを検索, 列挙することも可能になる.また, 代謝物質の化学構造と酵素反応を電子化するのに必要な, 三つの手続きと, それらの新しい解決法を示す:入力された化学構造中の芳香環を検出するもの, 構造をグラフと見なし正規化をするもの, グラフの最大共通部分構造を検出して, 酵素反応における原子の移動先を計算するものである.最後に, 電子化された代謝の解析結果を実験室で検証するための, 新しいパラダイムを示す.遺伝子のノックアウトには, ベクターDNAと呼ばれる様々な機能部位を持った人工遺伝子が使われてきた.DNAコンピューティングは, このベクターの合成を, 構成的かつボトムアップに行なう手段として有効と考えられ, その有効性を数々の基礎実験により実証する.
- 社団法人人工知能学会の論文
- 2000-11-01
著者
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