馬鈴薯疫病菌と共の抵抗性植物との關係に就ての研究

概要

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1. 本研究に於ては Phytophthora infestans (MONT.) DE BARY の寄生範圍, 奇主制限に與かる植物の持つ性質を研究し, 併せて其殺生性に對する考察を行つた。 2. 游走子嚢溷濁液を以て各種植物組織に接種する時は植物の感染, 不感染と種類の如何とを問わず, 其の表皮外膜の性質が菌の侵入に適する限りいづれの植物にも侵入する。 3. 植物表皮外膜の穿入は茄子科植物に於て最も容易であつて,殊に馬鈴薯, 蕃茄に於ては穿入不可能の様な場合はない。而して本菌の完全に生育し得る植物即ち寄主となるものは馬鈴薯,蕃茄のみであつて,其他に於ては全然病徴を表はさないか或は小褐斑又は微かに點を生ずるに過ぎない。 4. 幼弱な組織に於ては侵入孔の周圍に屡々 Callosity が形成されるが,其の侵入阻止の作用は認められない。 5. 馬鈴薯,蕃茄の罹病性品種に於ては菌は良好な生育をするが, 菌の侵入を受けた細胞は直ちに顯著な分解をする事なく, 菌の生育に伴つて徐々に分解するに對し, 抵抗性品種"疫知らず(在來種及び北海2號)"に於ては被侵入表皮細胞は迅速且顕著な崩壊を示し,菌は直ちに或は僅かに生育した後枯死する。催病性品種にても同一表皮細胞が同時に數個の菌の侵入を受けた時には速かに崩壊し,抵抗性品種に於けると同様に菌は生育不可能となることが多い。又幼組織は一般に其の罹病部の崩壊が早く, 菌の生育が不良である。 6. ナスビ, タウガラシ, タンバホウヅキ, ヨウシュチョウセンアサガホ及びナンテンハギ等の若葉の細胞内に於ては菌は僅かに伸長するが, 間もなく生育を停止する。細胞内容の顆粒化又は褐變は稍々甚だしい。 7. 共他の植物に於ては菌が表皮外膜を穿孔して直ちに或は間もなく枯死, 萎縮するものが多い。而して被侵入細胞は直ちに褐變するものもあるが, 比較的遅く變化を來すものが多い。 8. 人工培養基上に於て P. infestans よりも分解過程の進んだ成分を營養し得ることが認められて居るナスビ, タウゴマ, タバコ, サルビア, サトイモの疫病菌は植物上に於ても組織の分解に對して本菌よりも無關心である。
日本植物病理学会の論文
1935-12-25

馬鈴薯疫病菌と共の抵抗性植物との關係に就ての研究

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