WIPO「放送事業者新条約」にむけての議論と日豪国内法の対応(<特集>:電子化知的財産・社会基盤)
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概要
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放送事業者は, 文化の伝達過程において, 少なからぬ役割を果たしており, 1961年成立の「隣接権条約」も放送事業者の権利を認めている.しかし, 条約成立から今日までの技術の進歩はめざましく, 現在では, 同条約は放送事業者の保護に対応できていないため, WIPOは1998年に, 「放送事業者新条約」策定にむけての討議を開始している.本稿は, まずWIPO常設委員会における, これまでの討議を概観し, 新条約の大要を探っている.次に, 今後の議論に資する目的をもって, 新条約成立後の国内法の対応の予見を試みている.英米法諸国は, 伝統的に隣接権を認めることをせず, 放送事業者の権利も著作権により保護してきたため, 世界の情勢を俯瞰するには, 英米法系著作権法と大陸法系著作権法の両方を把握しておくのが適当であるが, 本稿では, 英米法系著作権法を持つオーストラリアと大陸法系著作権法をもつ日本を例に, 国内法の対応を考察している.そこから, 筆者は, 今後, 検討が必要な課題は, 現代において放送事業者の権利が保護される根拠をどう考えるかという問題と, アクセルコントロールの当否の問題の2点に集約されると分析している.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 2000-11-15