地域的集積におけるリンケージと分工場 : 九州・山口の自動車産業集積を事例として
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概要
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九州・山口の自動車産業集積は, 国内生産の合理化のなか, マクロ的な統計においては, 持続的な成長をみせている.しかし, 本稿の対象であるトヨタ九州とその1次サプライヤーの大部分は, 戦略的な意思決定に関わる間接部門を欠いた分工場であり, 乏しい域内リンケージを特徴としている.本稿は, 聞き取り調査で得られた知見をもとに, 局地的な情報の利用問題に注目することで, この2つの特徴-分工場と乏しい域内リンケージ-を結びつけている.第1に, 全知全能のマネジメントでないため, 分工場における意思決定機能の欠如は, 分工場の保有する潜在的な取引相手に関する情報の効率的な利用を阻害している.第2に, 分工場は情報収集機能をもたないため, 潜在的な取引相手の情報それ自体を収集しえない.ゆえに, 分工場の域内リンケージは, 相対的に乏しくなる.本稿では, 最近の1次サプライヤーの動向をもって, この傍証とした.以上から, 分工場を主要な構成要素とする地域的集積は, 個別工場の成長を集積全体に波及させていく力が貧弱である, という問題を抱えることになる.最後に, 地方の地域的集積の成長や構造的変容を評価するうえで, 地域的集積における分工場の構成比率や, 各工場の企業組織における位置などの分析によって, リンケージの定量的な分析を補完する必要性があることを提起した.
- 経済地理学会の論文
- 2001-06-30
著者
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