東京城東外周部における工業集団の変動 : 葛飾区を中心として
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概要
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本論文の目的は, 1990年代に入って円高が進み, 経済環境が激変する中での大都市東京内部の工業変動について, 葛飾区に焦点をおいて明らかにすることにある. 東京区部のうち城東地域の一画をなす葛飾区は, 城南地域の大田区とともに最大の工業集積地区を形づくっている. 葛飾区工業の業種構成をみると日用消費財工業の集積に特色がある. それとともに, 各種金属, 機械加工, ゴムなど, 機械工業と日用消費財工業の共通底辺をなす工場も多い. 大規模工場のほとんどが区内から外縁部に移転したため工場の零細化が進み, そのほとんどは従業者10人未満の極めて小規模な工場である. 葛飾区では, 東京の他の地域がそうであるように工場数が減少し, 設備投資も低調である. しかし, 厳しい環境にも拘わらず, 開発意欲の強い工場はかえって増えており, 新分野への進出も盛んである. 工場分散を反映して取引関係は広域化しているが, 生産工程上の関係は10年前とほとんど変わらず, 地元を中心とした極めて狭い範囲内で行われており, 多様な業種による工業地域コンプレックスを形づくっている. 区内全域に工場が集積し, 住宅と複雑に混在している土地利用の形態もほとんど変化していない. 工場をめぐる職住の関係も地域的に一体化しており, 産業地域社会も維持されている. しかし, マンションなど住宅の進出は進んでおり, 土地利用も地域社会もかなり変動するものと予測される. 今後, 葛飾区の工業は, それを支える産業地域社会の維持を図りながら, 各種加工業の技術を高め, それをベースにより強力な工業集団へとレベルアップを図り, 東および東北方面に拡大する大都市工業の加工技術と開発のセンターとして, 重要な役割を担っていくことが期待される.
- 1997-05-31
著者
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