1960 年代から 1990 年代の松島湾における底生有孔虫群集の変化
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概要
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(1)松島湾および周辺海域で得られた36試料より39属106種の底生有孔虫を同定した.このうち生体は, 16属, 34種で確認された.(2)Qモードクラスター分析により5つのクラスター, A, B, C, D, Eが識別された.これらのクラスター構成試料はそれぞれ松島湾外, 塩竃港, 湾口部, 湾央部, 湾奥部の海域に分布し, おのおのの海域の水質および底質の海洋環境と関連する.(3)1960年代と1990年代の底生有孔虫群集を比べると, 塩竃港以外の海域では大きな優勢種の交代は見られなかった.大局的に見て, 湾口部, 湾央部, 湾奥部それぞれの海域に対応して特徴種が存在する傾向も変わらなかった.(4)塩竃港では, 1930年代, 1960年代, 1990年代で優勢種が順に, Miliolidae, Elphidium crispum, Pararotalia nipponicaからTrochammina spp., Elphidium subarcticumを経てAmmonia beccarii forma1, Elphidium subgranulosumへと変化している.1930年代から1960年代の変化は岩礁地の消滅と, 1960年代から1990年代の変化は溶存酸素量の増加などの海洋環境の変化と関連することが推定される.(5)Trochammina属の相対頻度は1960年代と比べ, 湾央部および湾奥中部で減少する一方, 河口域の地点では増加している.これには水路掘削事業により野蒜海岸から海水が流入するようになったことや, 河川からの淡水の流入の影響などと関連があることが示唆される.
- 日本古生物学会の論文
- 1996-12-15