新生代における深海底生有孔虫の殻形態の変遷と古環境的意義
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概要
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1.石灰質底生有孔虫のうち, 富酸素型と貧酸素型の個体数比を, 海底の溶存酸素指標として用い, これにより, 有機物に富んだ黒色頁岩が堆積するような酸素欠乏状態でない場合にも, 溶存酸素の多寡を知り得る可能性を示した.2.溶存酸素指標により, 初期始新世と後期漸新世に底層水が現在よりも溶存酸素量の少ない時期のあったことが推定された.特に, 初期始新世の低酸素イベントは世界中で顕著に認められた.3.初期始新世の低酸素イベントの原因は, 高緯度表層水の高水温と水温上昇による深層循環の緩慢化であろう.4.後期漸新世の低酸素イベントの主因は, おそらく, 緩慢な温度上昇による冷水生産量の相対的な減少に起因する海洋循環速度の低下であろう.5.新生代の深海底生有孔虫群集は, 暁新世/始新世境界付近と中期中新世中期において, 主要な変化を遂げる.前者は低酸素イベントの始まりと一致し, 後者は高酸素イベントの始まりと一致する.
- 日本古生物学会の論文
- 1989-12-05
著者
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