954. 鮮新-更新統掛川層群産貝類群集の水深別に見た変遷過程
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概要
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鮮新-更新統上部掛川層群の砂泥質-泥質層より産する7つの貝化石群集型を識別した。それらの群集の生息環境は上部浅海帯砂泥底から漸深海帯泥底に及び, 各水深を代表する群集が時代を通して認められ, 生息水深毎に特徴種の時間分布を追跡することができた。その結果, 上部浅海帯に生息する暖流系種の一部は段階的に消滅しているが, 下部浅海帯以深に生息していた群集の構成にはほとんど時間変化が認められなかった。海水温の低下が生物群の消長に及ぼした影響を水深毎に特定するために, 食性, 生活型など類似の生態的特性を持つと思われる近縁種間で, 各々の種の生息深度, 地理分布に着目して時間分布を比較した。その結果, 水温の低下が種の消長に及ぼした影響は, 上部浅海帯以浅の水深に限られることが確かめられた。生物群の時間変化について水深間で認められるこの差異は, 鮮新-更新世の海洋の温度構造の変化を反映しているものと考えられる。
- 日本古生物学会の論文
- 1993-06-30