899. 島根県松江層の中期中新世後期の有孔虫
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概要
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松江市街を中心とした低地帯には, 中期中新世後期の浅海成層よりなる松江層が分布する。松江層はこれまで山陰地域の中新統最上部層として標準的に扱われてきたにもかかわらず, 古環境の復元に十分な資料が蓄積されていなかった。今回, 水源調査によって得られた1ボーリング試料により38タクサの底生有孔虫化石を認めることができたので古環境解析を行った。産出した有孔虫はAmmonia cf. beccarii, Elphidium izumoense, n. sp., Elphidium matsuense, n.sp., Buliminella elegantissima, Buccella cf. kuromatsunaiensis, Elphidiella praesomaensis, n.sp., Elphidium perforatum, n.sp., Pseudononion japonicum, Trichohyalus sp.等を特徴種としている。層位的分布では上部にA. cf. beccarii群集が, 下部と上部の一部でE. perforatum群集, E. praesomaensis群集, E. matsuense群集が発達する。このような群集組成は, 類似種の量的な比較をする限り東北地方太平洋岸の松川浦や松島湾の現生有孔虫群と組成内容が極めて似ていることで注目される。そのため後者Matoba(1970)のリストより選んだ11タクサについて主成分比較を行った結果, 松江層の下部層準は湾口内外の堆積環境を示し, 上部は水深が3m程度の内湾的環境へと変化していったと考えられる。従来松江層は貝化石群集や魚類-エビ化石より温暖な堆積環境が強調されていたのに対し, 今回検討した有孔虫群集は, 暖流系ばかりでなく寒冷水塊の影響も受けていたことを示す。
- 日本古生物学会の論文
- 1990-06-30