847. 内生二枚貝の潜入深度 : 現生種の観察および殻形態との関係
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概要
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日本各地の干潟などで22種の内生二枚貝の底質への潜入深度を計測した。二枚貝の潜入深度は, 同一種であっても, 体サイズ, 底質, その他の条件によって変化するので, ある種の潜入深度を簡単に表現することはできない。しかし, 潜入深度の最大値に注目すると, それは体サイズの成長にほぼ比例して増大することが分かった。したがって, 最大潜入深度の体サイズに対する比を用いてその種の潜入能力を表現しておくと便利である(例えば, アサリは2.6, カガミガイは5.0)。潜入深度が種ごとに違うのはそれぞれの生活様式の違いをよく反映しているためである。特に著しいのは, アサリやバカガイのように, 浅く潜りながら(概して15cmより浅い), 洗い出されても再び潜る能力を備えた種類と, ナミガイのように極めて深く潜るかわりに(30-40cmより深い)洗い出されたあと再び潜る能力を放棄した種類との違いであって, これらは頻繁に海底面上に洗い出される危険の高い浅海の, 特に砂底において内生二枚貝が取り得るふたつの生活様式である。化石種の潜入深度を復元するためには, 套線湾入の深さ(ただし, 水管を持ち活発に潜る濾過食者に限られる)が, 最も有効であることが分かった。しかし, このような殻形態に基づく復元には限界があり, 自生的産状の化石の露頭観察などの直接的な証拠に基づいた復元もあわせて行うことが望ましい。
- 日本古生物学会の論文
- 1987-12-30