830. 中部日本渥美半島産更新世介形虫
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概要
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日本の中央部渥美半島の太平洋岸に沿って, 更新統が連続して露出する。下部の赤沢シルト部層と, 中部の豊島砂部層に含まれるレンズ状の高松砂質シルトには, 保存の良い貝化石が大量に含まれており, 介形虫も多産する。赤沢シルト部層は下部1mに礫を多く含み, Corbicula japonicaを多産し, 棲管も多く見られる。介形虫は現生内湾泥底にすむBicornucythere bisanensisを多産し, アマモ場にすむAurila subconvexaがまじりこんでいる。赤沢シルト部層の上部は20mの塊状シルト〜粘土で, Dosinia angulosaとRaeta pulchellaが少量ながら自生の産状を示し, 介形虫はBicornucythere bisanensisのみが少量産出する。赤沢シルト部層の堆積時の環境は, 他所からの混入を含む内湾泥底から, 混入の少ない安定した内湾泥底となったことを示す。高松砂質シルトは直径1km前後の, まわりを豊島砂部層の砂で囲まれた小さなレンズ状のくぼみに堆積したもので, まずDosinia angulosaの自生する泥, 次にMya arenariaを主体にする多くの貝の混入をもたらした層, そして最後に少し深くなりTonna luteostoma等のすむ砂質シルトが順次に重なっている。介形虫はDosinia angulosaの自生する層には泥底にすむBicornucythere bisanensis〜Neomonoceratina microreticulateで代表される種の多様性の低い群集がすみ, Mya arenariaやTonna luteostomaを多産する層では種の多様性の高い, 砂泥底にすむPistocythereis bradyformis-Bythocythere ishizakii群集に変化した。Mya arenaria群集に伴う介形虫の群集とTonna luteostoma群集に伴う介形虫群集とでは差が明瞭ではない。1新属Hanaicythere(Microcytheridae)と8新種を記載した。AnchistrochelesとXiphichilus属は日本で最初の報告である。
- 日本古生物学会の論文
- 1987-07-30