電子商取引課税の現状と問題点 : 米国小売売上税との関連を中心にして
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概要
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1999年以降,インターネットの普及を土台にした電子商取引が世界的規模で急速に拡大してきたが,その拡大はとりわけ取引に関わる課税問題を焦眉の問題とするに至った.例えば,取引がデジタル化されることで企業活動が「中抜き」になり,また個人(消費者)が直接インターネットへアクセスするため仲介業者が不要になり,課税上のモニタリングや納税の機会が減少してしまう.こうした事態の進展が,競争条件の歪みや中立性の問題を発生させているのである.また同時に,電子商取引に対する税制上,課税政策上の各国の相違も指摘される.付加価値税を価格に上乗せする課税方法をとるEUに対し,米国ではインターネット上での取引は実質非課税になっており,それが既存の取引と比較した場合,中立性・公平性に欠けるという問題である.米国における電子商取引の課税に際しての問題の中心は,州売上税・使用税の問題にある.米国の売上税は,わが国の消費税などと異なって,連邦税ではなく州税・地方税として課せられており,その取り扱いは州によっても異なっている.各州政府は連邦最高裁判所の判例により,州内で物理的な事業活動を行っていない事業者に対して売上税の徴税を課すことが禁じられているため,売上税の課税対象となっていながら何らかの理由により売上税が徴収できない場合使用税を課している.州によっては州外事業者に対して使用税を消費者から徴税するように定めているところもあるが,資産の「使用」に関して買い手のいる州にネクサスを持たない事業者に対する法的拘束力はない.そのような場合には,買い手が使用税を課税当局に納めることになっているが,実際にはほとんど納税されていない.米国の州際取引に対する売上税・使用税の制度的脆弱性は,電子商取引の規模が拡大し取引の量が増加すればするほど,租税収入へのインパクトや国際的な課税システムの構築にあたり深刻な問題として露呈してくる.電子商取引課税に関する問題は一国のみの問題ではない.世界最大のインターネット取引規模を誇る米国での課税システムが整わなければ,世界的なルールの確立も困難である.栄国内の州税を統一・簡素化し,OECDを通じた国際的政策協調によって広い課税ベースで課税する方向で国際的足並みを揃えられるよう,現行システムの改革は急務である.
- 立命館大学の論文
- 2001-03-31
著者
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