『準市場(Quasi-Markets)の経済学』の未解決問題 : 韓国・台湾・日本の金融市場の歪み(distortion)の経験
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概要
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経済合理性には, Max Weberが言うように,市場合理性と計画合理性とがある.西欧の経験では,政府の市場経済への介入は個人や民間企業活動を阻害するから経済発展は望ましくないと見なされている.それ故,市場合理性の方が計画合理性より経済合理性があると考えられている.これと対照的に,政府活動の比重が大きい東アジアのいくつかの国が経済発展に成功した.これは,政府の卓越した指揮能力により市場合理性と計画合理性がうまく調合されて経済合理性が発揮されたと見なされる.私の準市場(Quasi-Markets)という概念の内容の大きな一側面はこのような特質を反映したものである.私の英文の著書"The Economics of Quasi-Markets"の草稿はイギリスの匿名の査読者から,韓国,台湾の準市場(Quasi-Markets)の経験の分析が具体的に欠落しているという批判を受けた.この論文は,それ故,韓国,台湾,そして日本の金融システムにおける「準市場」の仮説を検証するためこれらの3国の金融市場における金利水準決定に関する実証的研究を試みたものである.典型的には,韓国では政府が投資を刺激するため低い利子率そして貯蓄を誘引するために高い利子率の政策を取った.韓国政府は,金利が需要と供給によって決定されるように介入したのではなく,有利な投資機会をつくるため金融市場で複数の'wrong price'を設定するため干渉し,経済全体に効率性をもたらした.このことは程度の差はあるけれど,日本も台湾も同様であった.
- 立命館大学の論文
- 1999-03-31
著者
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