イウからユウ(ユー)音へ
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概要
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イウ音のユウ表記は、従来室町時代以後と言われていたが、鎌倉中期以降ある程度あることが判明した。これは、イウをユウ(ユー)とする発音が、少なくとも一部に存在していたことを物語る。しかも、限られた資料、限られた層にではない。源氏物語等古典の転写本と古文書の双方に、つまり、古典の転写に携わる層から地方(九州や若狭・近江・信濃等)在住の地頭や荘官、武士、百姓等に至る幅広い層にまで及んでいたことは、この変化がある程度浸透していたことを推測させる。初出は、一二世紀初めの西本願寺本三十六人集の元真集で、ついで、新古今集にも掛言葉の例がある。ただ、古典の転写本と古文書では現われ方に多少相違があり、それは、両者の資料の質の違いによると考えられる。
- 日本語学会の論文
- 2000-12-30