比較の副詞「もっと」における主観性
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概要
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比較の副詞「もっと」は視点を比較の基準とする。そのため,現在話し手が位置するところ,すなわち現在・現実・現場の状態や,談話の中で比較の直前に述べたことが比較の基準となる。また,比較の方向性と程度スケールの方向性を一致させることで,比較の基準が〜Aの状態であってはいけない場合と〜Aでもよい場合があることが説明でき,程度スケールを用いなければ,程度性のない比較の場合を説明することができる。これに対し他の比較表現「φ」(「XはYよりA」「YよりXのほうがA」)や副詞「より」では,比較の基準は視点ではないので,比較の基準となる状態を比較に先立って述べておく必要はない。また,比較に方向性がない「φ」は比較の基準が〜Aであってもよいが,副詞「より」は方向性があるので,〜Aを基準とすることに関しては「もっと」と同様な制約がある。
- 日本語学会の論文
- 2001-06-30