無生物主語のニ受動文 : 意味的関係の想定が必要な文
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概要
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動作主をニ格で表すニ受動文はその主語に有生物がならなければならないとされる。主語が無生物である場合,その成立にはゆれがある。本稿はなぜ無生物主語のニ受動文が成立するのかを考察し,その成立に類推の過程,すなわちベースとなるニ受動文の《基準的意味》に近づけて解釈するという創造的な解釈の過程があること,そのために潜在的受影者の想定が必要であることを述べる。潜在的受影者が想定しやすいものほど許容度は高くなり,その想定の手がかりとして例えば事象の意味や主語の表すモノの意味が働く。モノと潜在的受影者の間の意味的関係は構文と独立に存在するものではなく,ベースとなる構文の《基準的意味》に近づけて解釈するという必要からそれに見合うものとして創出されるものである。同じように意味的関係を創出して成り立つ文に二重主格文や状態変化主体の他動詞文などもあり,本稿で述べる構文の成立原理は一般性を持ったものである。
- 日本語学会の論文
- 2001-06-30