平安和文における敬語動詞の意味構造 : 「聞し召す」「御覧ず」の意味分析から
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概要
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主体尊敬表現は、動作主体を、筆者・話者が敬っていることを表明するものであるが、語彙的敬語形式「聞し召す」「御覧ず」では、動作主体が<支配者>という社会属性をもつことを表示して、主体に<敬意>を付与する。「〜給ふ」型の文法的敬語形式では、話者の動作主体に対する心的態度として<敬意>を表示するが、社会属性の表示は行わない。平安時代の主体尊敬表現には、話者の心的態度と、主体の社会属性の二つの尺度を認めることができる。また、「聞く」「見る」とその文法的敬語形式の動作的な意味は、物理的に<情報を受容する>動作過程と、心理的に<情報を処理する>動作過程の二つから構成される。しかし、「聞し召す」「御覧ず」は後者の動作過程を語の意味に含まず、物理的な動作だけを意味内容とする。主体が社会属性を帯びることに対応して、社会的な行為を卓立して表現する述語として適した意味構造となっている。
- 日本語学会の論文
- 2004-04-01
著者
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