北海道産コイチョウガニの第1ゾエアについて
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概要
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昭和47年1O月25日に北海道噴火湾沿岸の虻田で雌雑2個体のコイチョウガニCancer amphioetus RATHBUNが採集された。実験室の水槽中で飼育をつづけたところ,昭和48年1月20日に抱卵している雌が確認された。産卵は17-20日の間に行なわれた。2月23目に雌の腹部から放出された多数のゾエア幼生が観察された。第1ゾエアの主な特徴は以下のようである。甲皮に3棘(背・側・顎)がある(1)。第2触角の外彼の先端に1長毛と1短毛があり,相川(1937)によるB_4型に属している(2)。尾節は尾叉の基部背面に各個1棘があり,相川によるA_2型に属している(3)。第1・第2小顎と第2顎脚に色素胞がない(4)。第1・第2小顎の外肢の棘毛配列は,それぞれ6-1と3-3 (1)であり,第2顎脚の外肢は3節からなり,先端から5-1-11の棘毛配列となる(5)。以上の特徴は相川(1937)により報告されたイボイチョウガニCancer gibbosulus(DE HAAN)の第1ゾエアのそれらと完全に一致し幼生分類上の特徴となりえないことを示している。ヨーロッパ産のC.pagrusとカナダ産のC. amaenusの第1ゾエアと比較しても大きな相異はなく,ただこれらでは第2触角の外肢先端に1長毛と2短毛があるB_5型に属している。先に岩国(1970a, 1970b)が報告したヨツバモガ二Pugetgettia quadridens(DE HAAN)の第1ゾエアの特徴は,成体における分類学上の位置の相異に比例する大きな差がみられる。即ち甲皮に背棘と顎棘があり,第2触角はA_3型,尾節はA_1型であり,第1・第2顎脚に色素胞があり,第1・2小顎と第2顎脚の外彼の棘毛配列はそれぞれ4-1, 2-3(5)と4-1である。
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