実験研究とインフォームド・コンセント : Jay Katzの主張を中心に
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概要
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患者/被験者を対象とする現行の臨床実験研究はしばしば身体的・精神的危害をもたらす。また実験研究を臨床医療に持ち込むことが、通常医療の実験化を促しており、医師と患者の関係を損ねている。医療と実験研究の峻別を説くJay Katzの1993年の論考から、問題点と解決への手がかりを得るのが本論の目的である。Katzによれば、この種の危害は二者の混同とインフォームド・コンセント(IC)の不徹底が原因である。実験研究に誘われた患者は治療的効果を期待し、不十分な説明にも関わらず、実験結果の科学的確実性を約束するといわれている無作為化対照法に身を委ねる。Katzはこの方法に疑問を呈し、実験研究に際して開示されるべき情報の内容を挙げている。Katzは彼の主張する対話型のICの実現が困難であることや、IRB(機構内審査委員会)の不徹底さを慨嘆し、全米人体実験協議会の設置を提案する。今回(2000年秋)のヘルシンキ宣言改定の前夜にアメリカの医学雑誌で行われた実験研究論争の一部を瞥見すると、Katzの提案は未だ採用されておらず、実験研究におけるICの形式化、空洞化の動きが見て取れる。一方Katzの提案通りの情報開示が行われれば、有意義な実験研究への自主的な参加者が得られる可能性もある。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2001-09-17
著者
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