HIV抗体検査のルーチン化と倫理
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概要
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妊婦検診におけるHIV抗体検査のルーチン化の動きの倫理的問題を批判的に論じる。最近の治療技術の進歩によって、母子垂直感染率を著しく抑制することが可能になった。そこで抗体検査をルーチン化して、一律に妊婦に受検させようという動きが勢いをもってきた。しかし、現実の医療体制そのものがいまだ整っておらず、また感染者への偏見にもとづいた医療現場での差別的対応がいまだ後をたたない。ルーチン化されるべきなのは、抗体検査ではなくて、インフォームド・コンセントとカウンセリングであり、サポート資源についての情報提供である。他者危害の原則に拠って、権利以前に自分のHIVステータスについて知る義務が妊婦にはあるのだと強調する立場が予想されるが、それが無制約的なものとして正当化されるかどうかは疑わしい。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2001-09-17
著者
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