子宮内膜腺癌の発生過程に関する研究
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概要
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20-methylcholanthreneにより実験的にICR系マウスの子宮角内膜に惹起せしめた腺癌の発生過程に出現する各種腺性変化の検索を行ない, あわせてヒトの内膜腺腫状増殖の症例と比較検討することによつて, 内分泌学的に未解決の子宮内膜腺癌の発生過程を究明せんとした.1) MC糸法によるマウス子宮内膜の発癌実験により腺癌発生過程に出現する内膜腺増殖の態度を, 新しく採点法によつて非異型腺増殖, 異型腺増殖I, II, IIIおよび腺癌と分類し, 本採点法をヒトの内膜腺腫状増殖の分類に応用し, マウスの変化とヒト子宮内膜の病的変化とを比較検討することにより, 両者は形態学的にそれぞれきわめてよく一致し, 異型IIIがGusbergのMarked adenomatous hyperplasiaに相当することを知つた.2) 腺性変化の^3H-TdR摂取率は, 異型度に比例して上昇し, 異型II以下と異型IIIの摂取率との間には有意差を示すのに対し, 異型IIIと腺癌はともに同等であり, DNA合成の面ではほヾ同一の活性を持つことを知つた.3) マウス子宮角にMC糸を14週間挿入し, これを抜去し, その後に出現する各種腺性変化の消長を追跡した結果, A) 正常内分泌環境下では, 異型I, IIの変化が次第に消退するのに反し, 異型IIIおよび腺癌の合計は終始同一水準にあることを示した.本項および(2)より異型IIIは腺癌と同様に不可逆性であることが示唆された.B) MC糸抜去と同時にEstradiol pellet投与を行なうと, 異型IIIと腺癌が増加し, 正常内分泌環境下では可逆性とみなされる異型II以下の変化もさらに高度異型に進展することを知つた.C) MC糸抜去と同時に去勢またはProgesterone pellet投与を行なうと, 正常内分泌環境下では不可逆性であるべき異型IIIが一部可逆性の態度を示すことを知つた.また, 腺癌にもProgesterone pellet投与によつて一部に組織学的な反応の出現が確認され, その^3H-TdR摂取率は低下することを知つた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-03-01
著者
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