子宮頚癌III期症例に対するFull Dose術前照射の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
子宮頚癌III期症例(36例)にFull Doseの術前外照射を行い,その効果を検討した.術前照射例の手術時間,出血量など手術に及ぼす影響は非照射で根治手術を施行した,いわゆる術後照射III期症例(23例)より短縮,減少傾向がみられ,むしろ術後照射II期症例(85例)とあまり差を認めなかった.自尿開始や残尿50ml以下となるに要する日数及び有熱期間(38℃以上)など術後に及ぼす影響は術後照射III期例とは差がなかったが,II期症例よりはいずれも延長傾向を示した.術後摘出標本の病理組織学的検索を行ったところ,原発巣の癌実質は90%近くの症例(36例中32例)が放射線の影響を受け,癌細胞が変性,崩壊を呈し増殖性が低下していることが認められた.膣壁断端部や基靱帯先端部に癌浸潤がみられた症例はいずれも8.3%(36例中3例)で,術後照射III期例より明らかに低率であった.骨盤内リンパ節への転移の頻度も30.6%(36例中11例)で,対照群の術後照射III期例の56.5%より有意に低率であり,また術後照射II期例の36.5%と比べても減少していた.臨床的に問題となる術後合併症では尿路系障害が52.8%,直腸障害が47.2%と目立っていたが,これら合併症が致命的とたった症例はなかった.予後についての検討では再発率(治療後3年経過症例群)は35.O%で,これは対照群の術後照射III期例の52.2%や放射線単独治療III期例の46.8%より低率であった.また現在までの生存率推移を哀ると,術前照射例は術後照射III期例や放射線単独治療III期例よりは良好な傾向を示している.以上のことから,III期癌の治療の1つとして術前照射を行うことは意義のあることと認められた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-08-01
著者
-
小林 理章
兵庫県立病院がんセンター婦人科
-
早藤 雅也
兵庫県立病院がんセンター婦人科
-
大津 文子
兵庫県立病院がんセンター婦人科
-
長谷川 和男
兵庫県立病院がんセンター婦人科
-
武内 久仁生
兵庫県立病院がんセンター婦人科
-
小林 理章
兵庫県立淡路病産婦人科
関連論文
- 85.頚部腺癌の細胞学的特徴とその診断学的意義(婦人科24, 一般講演, 第25回日本臨床細胞学会総会記事)
- 14.組織型からみた頸部腺癌の悪性度と細胞学的特徴(第4群 婦人科(子宮頸癌(2)), 一般演題, 第24回日本臨床細胞学会総会)
- 子宮頚癌III期症例に対するFull Dose術前照射の検討
- 子宮頸癌初期浸潤像に対する細胞学的診断基準の検討
- 155.頚癌III期症例に対するFull Dose術前照射に関する検討 : 第26群 悪性腫瘍 VI (151〜155)
- 119.子宮頸癌初期浸潤像における細胞学的所見の診断学的意義(第30群:婦人科〔子宮頸部(I)〕, 一般講演および示説, 第23回日本臨床細胞学会総会)
- 217.子宮Spindle cell carcinomaと診断された一症例(婦人科15 : 子宮体癌(II), 示説, 第26回日本臨床細胞学会秋期大会学術講演会)
- 50.癌検診における細胞診についての検討(自動化・他, 示説, 第20回日本臨床細胞学会総会抄録)
- 2.子宮頸部初期浸潤像とその悪性細胞の所見(婦人科1, 一般講演, 第21回日本臨床細胞学会総会記事)
- 11. Cell cycleからみた頚癌Infusiontherapyにおける各種制癌剤の作用機構 (第1群 悪性腫瘍 (1〜27))
- A-27子宮頸部初期浸潤像における細胞診所見について(示説III-婦人科その(7), 第17回日本臨床細胞学会総会)
- 我々が行なつた子宮癌集団検診成績に関する検討
- 154.組織分化度からみた子宮内膜腺癌の細胞学的所見に関する検討(第40群:婦人科〔子宮体癌〕, 一般講演, 第22回日本臨床細胞学会総会)