ラット卵丘顆粒膜細胞の細胞質突起および卵子のmicrovilliにおけるprolactinの超微形態学的局在
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概要
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哺乳動物の卵子の発育・成熟過程において, 顆粒膜細胞の占める役割はきわめて重要である. この顆粒膜細胞の作用発現方法には複数の方式があると考えられており, とくに卵丘顆粒膜細胞と卵子の結合様式の一つとして, 卵丘顆粒膜細胞の細胞質突起が知られている. この突起は透明帯を貫いて卵子と緊密な接触を保ち, 透明帯で隔てられている二種類の異なる系列の細胞間を結び, 細胞間の相互作用を仲介する機能をはたしている. 一方, 顆粒膜細胞および卵子の細胞質内には, PRL(prolactin)の存在が証明されており, 両細胞はPRLの標的細胞の一種と考えられている. 本研究の目的は卵丘顆粒膜細胞および卵子におけるPRLの局在を, とくに卵丘顆粒膜細胞の細胞質突起および卵子のmicrovilliを中心に明らかにすることにある. 実験にはWistar系成熟雌ラットを使用し, PMSを10IU皮下注し, 40時間後にhCGを10IU皮下注した. ラットを2群に分け, PMS投与24時間後, あるいはhCG投与5時間後に麻酔下に層殺し, 卵胞を分離・固定した. 標本は, 通常の透過型電子顕微鏡観察用にはEponで, 電顕組織化学的観察用にはLowicryl K4Mでそれぞれ包埋した. 免疫染色は抗PRL抗体を用い, Roth et al.の方法に従い, protein A-colloidal gold法により行なつた. Positive controlにはラット下垂体前葉を用い, control testsには, 1) 緩衝液, 2) 非免疫正常家兎血清, 3) 抗体に十分量のhuman PRLを加えたものの三種類の溶液で抗体を置換したものを使用した. 観察には, HITACHI H-600透過型電子顕微鏡を加速電圧75kvで使用した. 通常のEpon包埋した標本で観察すると, PMS投与24時間後に卵丘顆粒膜細胞からの細胞質突起および卵子のmicrovilliが多数放出されており, hCG投与5時間後には両者はほとんど消失していた. したがつて, 以後の免疫組織化学的観察には前者を用いることにした. また, positive controlとして用いた下垂体前葉では, PRL産生細胞内の多数の分泌顆粒に一致して金粒子の沈着が認められた. またcontrol testsではいずれの系列にも有意な金粒子は認められず, この免疫組織化学的染色法の正当性が証明された. 透明帯内の卵丘顆粒膜細胞の細胞質突起および卵子のmicrovilli上には, 金粒子の沈着が認められ, 同部位のPRLの局在が証明された. また, 突起は卵子細胞膜との間にgap junctionを形成している像も観察され, その接合部の近傍に金粒子が認められた. 卯子を取り囲む透明帯は, 分子量1,600程度の物質は自由に通過させるが, それ以上の分子量のものは通過させないと考えられている. したがつて, 分子量22,000以上のPRLは, 何らかの特殊な輸送経路を経て卵胞液から透明帯を通過して卵子に輸送されていると考えられる. 今回の実験では, 電顕的免疫組織化学的手法を用いて, 透明帯内の卵丘顆粒膜細胞の細胞質突起および卵子のmicrovilliにPRLの局在が証明された. したがつて, 卵胞液中のPRLは卵丘顆粒膜細胞の細胞質突起を通つて, 透明帯を隔てた卵子に輸送されていることが示唆された.
- 社団法人 日本産科婦人科学会の論文
- 1989-09-01
著者
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