子宮頚部腺癌の核DNAヒストグラムに関する研究 : とくに組織学的広がりとの関連について
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概要
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核DNAヒストグラムから子宮頚部腺癌の臨床的悪性度を表わす指標を得るために, 以下の検討を行つた. 対象は子宮頚部腺癌34例で, うち15例は生検材料または摘出子宮病巣部からの組織切片に, Pararosanilin-Feulgen染色したものを用いた. また19例は,パラフィン固定後の組織ブロックを使用して, DAPI染色を行つた. いずれの標本も, 落射型螢光顕微測光法により核DNA量を測定し, そのヒストグラムを作成し, 症例ごとに臨床像, 組織学的癌の広がり, 分化度, 組織型, 原発巣の大きさおよび予後について比較検討した.(1) 摘出子宮における組織学的検索の結果, 病巣が子宮頚部に限局していた症例において, euploidyは88.2%(15/17)と主体を占め, aneuploidyを示したものはわずか11.8%(2/17)であつた. 一方, 子宮頚部を超えて癌が広がつていた症例では, euploidyは41.2%(7/17)で, aneuploidyを示したものが58.8%(10/17)と, aneuploidyを示したものは限局例に比し有意に多かつた(p<0.05). また, 子宮頚部外浸潤例は, 子宮頚部限局例に比較し, その分布幅において8C以上まで幅広い分布を示した. (2) 分化度との関係では, 分化度が低くなるほど, aneuploidyの占める割合および2Cから8C以上の幅広い分布を示す割合が高かつた. (3) 原発巣の大きさ, 組織型との関係ではDNA ploidyおよびDNA量の分布幅には一定の傾向はみられなかつた. 以上より, 子宮頚部腺癌のDNAヒストグラムにおいて, aneuploidyを示し, かつ分布幅の大きいものでは, 病巣が子宮頚部を超えて広がつている可能性が強く示唆された.治療前に, このような情報が得られれば,治療法選択,あるいは予後推定の一助となりうると考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-06-01
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