胎児発育とポリアミン代謝に関する研究
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概要
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胎児発育過程におけるポリアミンの意義を明らかとするため、ラットを用い正常発育過程および実験的子宮内発育遅延仔(母体飢餓法、子宮動静脈結紮法の二法)における組織中ポリアミン濃度の変動を検討した。1)ポリアミンは正常発育過程の肝、脳、において胎生期、新生仔期には成熟期と比べ高値を取り加齢とともに減少したが胎盤ではポリアミンの変動は少なかった。量的にはスペルミジン、スペルミソがプトレッシンに比べ多く、スペルミジンは胎生期、新生仔期に高値を維持した。一方、成熟期との比較をした場合、胎齢15日の肝においてプトレッシンが成熟期の約50倍であるのに比べスペルミジンは約3〜5倍と、特にプトレッシンの胎生期における著しい高値が特徴的であった。2)発育に伴うポリアミンの変動パターンには臓器特異性が見られ、殊に肝ではスペルミンは新生仔期に低値を取り、以後加齢とともに増加した。3)これらのポリアミン、特にプトレッシン、スペルミジンの変動パターンは核酸の変動パターンに類似しており、新生仔期における肝ポリアミンの増加は核酸の増加に先行していた。4)実験的子宮内発育遅延仔における重量変化の検討で脳、胎盤に比べ肝の重量減少が著しく、ポリアミン量の変化としては肝におけるプトレッシンの有意の減少、スペルミジン、スペルミンの有意の増加が特徴的であった。以上のことより胎児発育とポリアミンとの間に密接な関連が示唆され、ポリアミンのうちでは、特にプトレッシンが重要な役割を果たしているのではないかと推測された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-07-01
著者
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