螢光顕微測光法による子宮頚癌の発生進展過程における核DNA量の変化に関する研究
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概要
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子宮頚部正常扁平上皮、扁平上皮化生を対照に、異形成上皮16例、上皮内癌6例、Ib期扁平上皮癌のkeratinizingtype(以下K)11例、large cell non-keratinizing type(以下LNK)28例、small celltype(以下S)14例の術後組織標本のパラフィン切片を用い、顕微鏡下に狙い採取した病巣より機械的および酵素処理により得た単離細胞の核DNA量を螢光顕微測光法を用いて測定し、その分布域、モード分析からこれらの病変の定量的識別の可能性を検討するとともに、扁平上皮癌の各組織型について間質侵達度と癌細胞の核DNAの量的変動、モード変化との関係を検討した。その結果、正常扁平上皮、扁平上皮化生では核DNA量は2C(diploid)〜4C(tetraploid)領域に分布し、2Cにモードを認め、軽度異形成上皮では2C〜4Cまたは高4C領域に、高度異形成上皮では低2Cまたは2C〜高4Cまたは8C領域に分布し、これらのモードはいずれも2Cに認められた。上皮内癌では核DNAの分布域はさらに広がり、8C領域をこえるhyperploidcenの出現頻度は6例中5例(83.3%)でモードも2C、4Cに認められた。浸潤癌では核DNAはより高倍体域に広がり、8C領域をこえるhyper-ploid cellの出現率もKで90.9%、LNKで96.4%、Sで100%に達し、間質侵達度とは関係が認められなかつた。一方、モード分析では3?以内の表在浸潤部と5?以上の深部とを比較すると、間質侵達度を増すにつれてaneuploidへ向うモード変化が示され、Kでは2C→aneuploid、LNKおよびSでは4C→aneuploidへの変化が優位であつた。これらの結果から、上皮内癌を含む扁平上皮癌の定量的識別基準として8C領域をこえるhyperploid cellの存在を、浸潤癌の診断基準としてaneuploidcellの存在を提示した。また、癌の発生から浸潤へと進展する過程において、2C、4C領域の根幹癌細胞からさらに高倍体域の根幹細胞の派生によりaneuploidに向うと推論された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-05-01
著者
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