ヒト卵胞液中のインヒビンに関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
インヒビン(FSH分泌抑制因子)がヒト卵胞液(Humanfollicularnuid以下hFFと略)中に存在することを、ラット下垂体前葉細胞単層培養系を用いたinvitroの実験にて明らかにした。次いでヒト卵巣卵胞液中のインヒビン活性を測定し、末梢血中のFSH濃度とhFF中のインヒビンとを月経周期別に比較検討した。1)Dextra-Coated charcoal(DCC)処理後のhFFによる下垂体培養細胞のFSH分泌は3μl/mlの濃度よりdose-dependentに抑制され、LH分泌には影響を認めなかつた。2)下垂体細胞におけるhFFによるFSH分泌の抑制効果はステロイド(estradiol、progesterone、tes-tosterone、androstenedione)とは異なつていた。3)LH-RH添加時のhFFによるFSH及びLHの分泌は1μl/ml伽の濃度より共に抑制された。4)hFF及びブタ卵胞液(Porcine follicular fluid以下pFFと略)のFSH分泌における用量反応には平行性が認められ、同一の抑制的な作用を有する物質の存在することが示唆された。5)月経周期におけるhFF中のインヒビン活性はpFF1nlを1unit(u)として表わすと、卵胞期初期(113.1±2.7u/10μl、Mean±S.E.、n=4)、中期(156.1±16.5u/10μl、n=5)、後期(178.0±24.0u/10μl、n=5)へと順次増加し、黄体期(100.9±15.9u/10μl、n=6)では減少して卵胞期初期と有意な差は認められなかつた。6)卵胞期においてhFF中のインヒビン活性と末梢血中のFSH濃度との間には負の相関関係(r=-0.7395、p<0.01)が認められた。以上より、hFF中には下垂体からのFSH分泌を抑制する非ステロイド性の物質が存在することが明らかとなつた。次いで卵胞液中のインヒビンは、LH/FSHsurge以外では月経周期が進むにつれて増加し、末梢血中のFSH濃度と負の相関関係が明らかとなつた。従つて今まで知られていなかつた非ステロイド性のインヒビンが、下垂体のFSH分泌に対する重要な調節因子の一つであることがヒトにおいても予想され、さらに卵胞発育ならびに排卵にも関係することが示唆される。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-05-01
著者
関連論文
- 22. 新しい排卵誘発法 : HMG律動的皮下投与法 : 第3群 不妊・避妊
- HMGの律動的皮下投与による排卵誘発
- 190. ヒト卵巣莢膜細胞の単層細胞培養法による培養 : 第32群 内分泌 VIII (188〜193)
- 39.体重減少性無月経の統計的・内分泌学的検討 : 第7群 内分泌 I (38〜43)
- 166.排卵性高Prolactin血症の黄体機能 : 第28群 内分泌-臨床 IV (162〜168)
- 220. 子宮周囲血管内奇胎(仮称)の病態・臨床像とその治療 : 第39群 絨毛性疾患 II
- ヒト卵胞液中のインヒビンに関する研究