人子宮腺癌における放射線抵抗性因子としてのPotentially lethal damage (PLD) repairの意義について
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概要
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子宮癌の放射線療法では腺癌は扁平上皮癌に比較し放射線抵抗性であるとされている.そこでこれらの成因を知る目的でPLD repairに注日し,培養細胞を用いて検討を行つた. 用いた培養細胞株はHeLa S_3株(人子宮頚部腺癌),HEC-59株(人子宮体部腺癌),SNG-M株(人子宮体部腺癌),SKG-3a株(人子宮頚部扁平上皮癌)で,plateau phaseのこれらの細胞に放射線照射を行い,生存率をcolony formation assayで測定し,各細胞のPLD repair能を比較検討した.また,HeLa S_3についてはヌードマウス大腿皮下に移植継代後,放射線照射を行い,同様にcolony formation assayにより固型腫瘍でのPLD repairを測定し,以下のごとき成績を得た. 1)ヌードマウス移植腫瘍でのPLD repairは照射後約6時間で定常状態に達し,回復率は約4倍であつた. 2)各培養細胞株のPLD repairも約6時間で完了した.またHeLa S_3はin vivoにおいてもin vitroにおいてもほぽ同程度の回復が認められたことから,plateau phaseの細胞を用いることで,固型腫瘍でのPLD repair 能を外挿し得るものと考えられた. 3)放射線照射直後の線量-生存率曲線から,各培養細胞の放射線抵抗性はHEC-59>SNG-M>HeLa S_3>SKG-3aの順に大きかつた. 4)照射直後と照射後6時間での線量一生存率曲線から,各培養細胞のPLD repairの大きさはHEC-59>SNG-M>HeLa S_3>SKG-3aの順であり,これは放射線抵抗性の順と一致した. 以上の結果から,放射線抵抗性とPLD repairには相関があるものと考えられ,腺癌の放射線抵抗性の一因としてPLD repairが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-09-01
著者
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