正常prolactin血症性乳漏症の病態生理および治療に関する研究

概要

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外来での血中prolactin値が25ng/ml以下の正常prolactin血症性乳漏症患者13名を対象として,(1)TRH負荷テスト,(2)血中prolactin値の日内変動,(3)黄体中期の血中estradiol(E),progesterone(P)値を指標とした黄体機能の検討を行つた.TRHは500μgを筋注投与し,前,30,60,90,120分値を検討した.日内変動は手背に留置針を置き,2時間毎になるべく無侵襲に採血して検討した.これらの症例にbromocriptine5mgを30日間投与し,前後の(1)(2)(3)を比較した.乳漏症のない正常性周期を有する婦人17名を対照とした. 1)乳漏症群ではTRH負荷テストで前値も含めていずれの値も対照に比べて有意に高値を示した(p<0.05〜0.005). 2)乳漏症群では夜間のpeakが30ng/mlを超える症例が大部分で,対照に比較して22時〜8時まで有意に高値を示した(p<0.05〜0.005).Bromocriptineの投与により乳漏症はみられなくなり,血中prolactin値は著明に低下して夜間のpeakも消失した.また乳漏症群と,乳漏を伴わない潜在性高prolactin血症群とを既往妊娠歴の有無で比較検討したところ,前者の方が有意に高頻度に妊娠の既往を有していた(x^2=6.178,p<0.05). 3)黄体中期におけるE,Pはbromocriptine投与によりいずれも有意に正常域まで上昇した(p<0.005,p<0.005).またBBT上高温相も有意の延長をみた(p<0.005).この治療法により3例に妊娠が成立し,いずれも順調に発育中である. 以上のことから一点採血では正常値を示すいわゆる正常prolactin血症性乳漏症の病態は潜在性高prolactin血症によるものであることが明らかとなり,乳腺側の条件として既往妊娠歴を有する場合に乳漏症を伴いやすいことが判明した.また,かかる疾患に対するbromocriptineの投与は乳漏症のみならず本疾患に数多くみられる黄体機能不全にも有効であることが明らかとなり,夜間に一過性に上昇するprolactinが黄体機能不全をひきおこしている可能性が示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-11-01

正常prolactin血症性乳漏症の病態生理および治療に関する研究

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